むし歯治療は痛くなければいいのか
むし歯治療こそ多くの一般開業医たちが毎日、当たり前のようにこなしている治療だろう。
そして、短時間で済ますことができると思ってしまっている治療ではないだろうか。
もしかすると歯科医師も国民も、むし歯治療は誰がやっても結果が同じ簡単な治療だと思っているかも知れない。
では、むし歯治療にマイクロスコープは必要ないのだろうか。
マイクロスコープの必要性を感じ、根管治療以外にも使用するようになった歯科医師たちはすでに知っている。
むし歯治療の難しさを。
むし歯は経験15年の歯科医師で13%取り残すとされている。
(1979 総山:無痛修復)
ところが我々マイクロデンティストは13%などという数字はとてもじゃないが信じられない。
それほど、ほぼ全ての治療された歯の内部に感染歯質を確認する。
感染はエナメル質を超えて象牙質に進行した時点で再石灰化が期待できないため切除療法が必要になる。
象牙質は象牙細管というストローような集合体で、その一本の直径は約3μ。
しかしミュータンス菌というむし歯菌の直径は1μなのでストローの中に入り込んでいる。
厄介なことにどこまで入り込んでいるかはわからない。
マイクロスコープを使っても十数ミクロンまでしか確認できないからだ。
むし歯の除去は麻酔をしてラバーダム防湿を行って始める。
削っても、削っても
がん細胞が転移するようにむし歯の感染も広がっている。
第二象牙質の下に感染歯質があることなどザラだ。
一種類のう蝕検査では取り残しは起こりやすいだろう。
だからこそ、
う蝕検知液を使い、
カーバイドバーを使い、
スプーンエキスカを使い、
マイクロスコープを使う必要があるとも言える。
自分はここまでの処置で最低でも45〜60分かかってしまう。
保険診療ではこれを160円でこなさなければならない。
出来るという先生がいれば紹介しよう。
患者さんにも訊きたい。
160円の仕事は何分で終わらせるべきですか?
むし歯治療は痛くなければいいのか?
保存歯科治療の治療目的は細菌感染の除去と炎症のコントロールだ。
確かに痛みを主訴に来院する患者さんはまだまだ多い。
しかし私たちの敵は決して痛みではない。