再製のない修復治療のために②・・・アルジネート印象採得
見た目や機能面だけでなく
根管治療の成功率を高めるためにも
2次カリエス(2次う蝕)を防ぐためにも
歯周炎、歯周病を防ぐためにも
精度の高い補綴・修復治療は重要だ
人工歯を作成する過程で必要な処置に”印象採得”がある。
正確な印象が正確な歯型となり、正確な模型になる。
精密な人工歯のためにはそれまで積み重ねた治療の総決算になる。
印象採得はテクニックセンシビリティーが高くシビアである。
支台歯の印象採得はプレパレーションを施したDrが行うべきだろう。
削るだけはさすがに歯科医師がやるが
型どりは歯科衛生士もしくは歯科助手がやっている医院もあるのではないか?
個人的には、歯科技工士に委ねる最後の処置を自分で行わない歯科医師に自分の体は任せたくはない。
印象材が固まるまでの時間は患者も術者も動かないように集中しなければならず、
もっとも緊張する3分といえる。
印象材には石膏、ラバー、コンパウンド、寒天、アルギン酸、シリコーンなどがある。
トレーも既製トレー、個人トレー、個歯トレー、コピーデンチャーなど様々。
2018年現在、日本の歯科臨床で多く使われているのはアルジネート、寒天の連合印象だ。
安価なこととその再現性のバランスがその選択理由であろう。
今回はアルジネート印象材についてお伝えしていく。
練和時に気泡が入らないように歯科衛生士や歯科助手の皆さんは粉・水を練るトレーニングをすることになる。
あべ歯科クリニックでは開業以来ペーストタイプを使っている。
アルジネート印象材でも粉に比べてコストが高くなるが均一な精度の高い模型作成に貢献してくれる。
手練りに比べ気泡が少ないため患者さんは再印象、型採りのやり直しが減る。
スタッフもトレーニングの時間を知識向上の時間やプライベートを充実させる時間にすることができる。
弱点は滅菌できないこと、弾性歪みも大きいが永久歪みが大きいこと、強度がなくちぎれること、
すぐに石膏を注ぐ必要があることだ。
アルジネートの印象体は、水中で膨張、空気中で収縮、湿箱中ではわずかに収縮する。
アルジネート印象材の主成分に水があるためで、水分が蒸発すれば収縮し、過剰な水分で膨張してしまう。
補綴再製ゼロプロジェクト/歯界展望 2016.4より引用
たった1時間でこれだけ寸法変化してしまう。
これだけ寸法変化、つまり変形すればそこに注いだ石膏模型も変形しているし、
つくる詰め物やかぶせ物である人工歯は適合するわけがない。
このような問題がなぜ日常臨床で起きるかというと
昼休みと診療後にまとめて石膏を注いでいるからだ。
患者さんを、少しでも早く・多く診ていきたい、診る必要がある場合は
いちいち毎回印象に石膏を注ぐのは時間的ロスがあるため、後でまとめて行う歯科医院が多い。
そしてアルジネート印象体は時間が経つうちに変形して、患者さんの口の中と違う模型が出来上がる。
その模型で作った詰め物やかぶせ物の人工歯は調整が多かったり、再製作になってしまう。
もしくはそのまま装着される。
残念ながら硬化後直ぐに石膏を注いでくれている歯科医院かどうかを知る術は一般の方にはないだろう。
私たちは院内の歯科技工士が直ちに石膏を流し込むようにしている。