これからの日本歯科臨床を考察する④
なぜ保険医を辞めて保険医療機関で働くのか
<3つ目の理由> 将来の歯科医師のため
自分がいつ保険医登録したかを覚えている歯科医師がいったいどれくらいいるのだろうか。
昭和36年に始まった国民皆保険制度だが今では当たり前に保険診療があって、
勤務する歯科医院もほぼ99.99%保険医療機関である。
初めて勤務するにあたり保険医登録証の提出を求められた気がする。
さらに今は卒後臨床研修を受けなければならず、
100%の新たな歯科医師は保険医登録されてしまうシステムになっている。
つまり、国家試験に合格して勤務するまでの間に、厚生局に申請しているのである。
要は保険医になるか、ならないかの選択をしていないのだ。
今回自分がこのような選択をしたことで多くの歯科医師達と話をしたが皆そんな感じだった。
サーカスで仔像に鎖をつける話を知っているだろうか。
鎖で繋がれた仔像は初め、その鎖をちぎろうとして暴れる。
しばらく暴れて鎖がちぎれないと察すると鎖をはめられると静かになるのだ。
そしてそれは鎖を簡単に引き抜くことができるような大人の像になってからもだ。
出来るのに諦めてしまっているので挑戦すらしない。
ノミとコップの話を知っているだろうか。
ノミを捕まえてコップに入れて蓋をする。
ノミも初めはジャンプして蓋にぶつかってしまう。
ノミのジャンプ力は体の150倍ほどあるらしくコップなんて楽に飛び越える力を持っているはずだ。
しかし蓋にぶつかるのを繰り返すうちにノミはコップの高さまでしか跳べなくなってしまうという。
それはコップから出したとしても。
飛べないノミが元のジャンプ力を取り戻す方法が一つだけあるという。
他の跳べるノミと一緒にする事。
そうすると再び跳べるようになるというのだ。
卒業したては経験も知識も足りない。
初めに医療と医業のギャップに苦しんでもがいていても、
いつの間にか諦めて何も考えなくなるのかもしれない。
学会などに行くと発表されている内容のほとんどが保険外診療でしかない。
食べることができる、
痛くなくなれば良い、
腫れが引けば良い。
そんなのは21世紀の先進国ならもう当たり前だろう、
みんないい加減に変わろうじゃないか。
このマズローの欲求階段説を参考にした表の物質的欲求までが
保険診療というか、昭和36年当時歯科治療で出来ることだったのだ。
私はよく噛め、生涯歯を残せるような治療を提供したい。
患者の希望も歯並びや歯の色にに変わってきている。
そこを保険で満たすのはおかしい。
保険で良い治療?
治療費を適正にしてから言ってもらいたい。
ダンピングもいい加減にしてもらいたい。https://www.abesika.or.jp/private-practice/about/preciseness.html
健康保険導入当時の簡潔な処置しかなかった時代は良かったろうが、
技術が進み歯科医療従事者が真面目にやればやるほど苦しむことになる今のシステムは歯科医療従事者のモチベーションを高めることが難しい。
私はたまたま学習していく間に日本に数%の歯科医師と知り合いになっただけ。
彼らといると地元の歯科医師会にはない心地よさがある。
本来、政治・学術団体である歯科医師会は全く力がなく最低のラインに合わせてことを考える。
そっちのみんなが動くまで待っていられなかった。それだけだ。
何か行動しなければ国はそれでいいと思うだろうし、
税収が減っているのに当然歯科医療費の予算を増やすなんてことをする訳が無い。
そして私たちを知った若い先生が
まず資金ありきではなく、
歯科医療のあるべき姿を明確化し、
コストよりこだわりを追求する部分も大切だと、
コップを飛び越えて欲しいと願う。
歯科は本当はもっと国民に貢献できる。
そんな歯科医師が増えて国民が動き、
国も動かざるを得ないようになることを願う。
自分たちが動かなければ周りが環境を準備してくれることなんてありはしないのだから。