再製のない修復治療のために③・・・シリコーン印象採得
見た目や機能面だけでなく
根管治療の成功率を高めるためにも
2次カリエス(2次う蝕)を防ぐためにも
歯周炎、歯周病を防ぐためにも
精度の高い補綴・修復治療は重要だ
今現在、最も変形や歪みの小さな印象方法は光学印象だ。
今後はカメラで撮影したデータでクラウンを製作することが増えるだろう。
滅菌や感染の心配も少なく時間も短い。
患者の苦痛も軽減するだろうが、今はまだ歯肉縁下の印象は難しいと考える。
精度だけでなく審美的な部位やそれ以外の理由でも
今はまだ
形成限界(マージン)が歯肉縁下になる場合はシリコーン印象材が最適だと考えている。
歯肉溝内に印象材が流れないと歯科技工士は歯根面がわからない。
歯根面が解らないと適切なカウンター(歯の豊隆)が与えられない。
適切なカウンターが無いとプラークコントロールが難しくなったり
歯肉退縮や歯肉炎が起こったりする。
歯肉溝内の印象はシリコーン印象材でなければちぎれてしまうことが多い。
精度にこだわるなら永久ひずみが小さなものがいいので、
アルギン酸に比べて10倍もの違いがあるシリコーン印象材が選択されることが多いだろう。
シリコーン印象材は元来疎水性であるため、
親水性の高いハイドロコロイド系のアルジネート印象材や寒天印象材に比べて水分により印象の成否が影響される。
どうしても避けることができない血液・滲出液・唾液の多大なる影響を受け、思い通りの印象が採れないことがある。
だから印象前には出来るだけ歯肉のコントロールをする。してもらうことになる。
ちょっとでも乾燥下で歯根面の印象をしたいのだ。
その為歯肉溝内の浸出液をブロックするために一次圧排糸を挿入する。
挿入圧は付着を破壊しないようにプロービング圧と同様に25グラム以下で行う必要がある。
歯肉溝を押し広げ、できたそのスペースに印象材を流し込むために2次圧排糸を噛み込ませる。
5〜10分保持して印象を待つ。
2次圧排糸には浸出液を抑制させる薬液を浸透させている為、よく水洗してから印象する。
印象の硬化時間はタイマーを必ず使いメーカー推奨時間を厳守するだけでな
く30〜60秒は口腔内保持時間を延長するようにしている。
立体的な歯や歯列の印象採得ではアンダーカットが存在する。
このため変形が必ず伴い、この影響をいかに抑制するかが精密な印象体と精密な模型作成に繋がる。
したがって印象材の性質としてはアンダーカットを乗り越えた後の
『永久ひずみが小さく』、
アンダーカットを乗り越えるために
『弾性ひずみは大きく』、
『寸法変化の小さなもの』が良い。
近年様々な商品が開発されてきているが
出来るだけ親水性が高い印象材を選択したい。
シリコーン印象材の場合、石こう注入のタイミングが早いと印象材の硬化反応時に発生する水素ガスの影響により、
石こう模型の表面に気泡が発生する恐れがある。
水素ガスの発生により模型面が荒れるので、
印象採得後60分以上経過してから石こうを注入するようにした方が良いとされている。
印象材は撤去時に必ず歪む。
鼓形空隙や最大豊隆部が大きな場合は必ずアンダーカットをワックスや寒天で調整する。
それでも歪みはわからない為
違う種類の印象材、つまりアルジネート寒天連合印象も確認のために採得しておく事が多い。
印象撤去時のひずみの回復と水素ガスの影響を考慮して
私たちはシリコーン印象材は24時間程度経過してから模型材である超硬石こうを注入している。
印象材自体の値段もあるがプラスチックトレーやミキシングチップなどのディスポの準備も必要でありコスト差は大きい。
保険診療でクラウンの印象採得は640円と決められている。
ここでも精度を求めた最善の治療は提供出来ないことがお判りいただけるだろう。
そしていつも使っていない歯科医師は
テクニックセンシティブなだけに
ハイドロコロイド印象材の方が精度が高いかもしれない。。。