根管治療した歯の『フェルール』は確保できているか
フェルールは確保できているのか
『治療した歯を長く保たせること』
患者、術者にとって共通の治療目標ではないだろうか。
治療した歯を残す(抜かない)ことと、長く保たせることは異なる。
『歯の神経を取ると枯れ木の様になって折れやすくなる』
よく聞くことがあるかもしれないし、私も過去はそう思っていた。
そして類に漏れずその様に患者にも説明をしていたが実はそうではない。
実際は歯の残り具合によってその歯の破折に対する予後は大きく異なってくるのだ。
Reehは辺縁隆線の喪失が歯牙の剛性を低下させるとし、
処置前の咬頭の剛性を100%とするとMODの修復処置では60%低下するが、
歯内療法では5%しか低下しないとしている。(1989 Reeh)
もちろん歯内療法の拡大や根管充填で歯根破折のリスクが高くなることも多くの報告がある。
とにかく根管治療を施すまでに至った歯はその多くがむし歯に感染しており、多くの歯質を喪失している。
更に再根管治療にまで至った歯においては尚更である。
根管治療を行なった歯で支台築造、支台歯形成を行う場合は
『フェルール』という歯質の厚みが1mm以上、高さが1.5~2mm必要とされる(図a)。
クラウンでの帯環効果を桶の箍のように出すためだ。
図bの状態では突き上げや横揺れに抵抗できず脱離や歯根の破折を起こしやすい。
割れ方によっては選択肢が抜歯しかなくなる。
このフェルールを確保するためには部分矯正による歯牙の挺出や
クラウンレングスリング・歯冠長延長術といった外科処置が必要になることも多い。
痛みはないし、クラウンを被せてしまえば外からもう見えない。
耐震偽装マンションではないが構造が違えば当然結果が異なってくる。
保険診療にこの環境改善は治療オプションとして含まれていないため、
多くの保険歯科医師はまだ治療して長く使える歯を抜歯にするか、
強度がないのはわかった上でクラウンを入れることになる。
大切なことは患者自身が”それ”を知って選択しているかいないかだ。