2年間治療し続けたあとの根管治療
根管治療のために2年間毎週のように歯科医院に通院し
蓋をすれば痛くなるので蓋を外す。
蓋を外せば痛くなくなるので消毒して蓋をする。
そうするとまた痛くなるの繰り返し。
さすがに耐えきれなくなってマイクロスコープを使ってくれる歯科医院を自分で探して転院した。
なんと保険診療でマイクロスコープを使って60分ぐらいかけて毎回治療してくれたらしいが一向に痛みがなくならない。
たまたま当院の患者さんからの紹介で来院された。
前医は口腔外科出身の先生で歯根端切除術をやってくれていたが
逆根管充填がされていない。。。
仮封は3.5mm以上必要とされているが仮封は厚みがなく薄いために外れて根充材丸見え。。。
ガッタパーチャは歯と接着しているわけではないので
漏洩し放題。。。。
こんな原理原則を完全に無視した治療が横行している。
ちなみにこの患者さんは12本根管治療をしていてそのうち8本に根尖部の炎症像を認める。。。
本来90%以上の成功率のある治療が成功率33%です。。。
日本の一般的な根管治療の成功率は約26〜50%と言われているので
このような人が非常に多いのが現状です。
泥水の中で洗濯をしても綺麗にならないように
唾液の中で根管治療しても綺麗にはならない。
100回も繰り返せば削りすぎで歯が薄くなって予後は悪くなる。
100回治療しようが
マイクロスコープを使おうが
唾液の中で菌を減らす処置は不可能です。
一本の歯に100回も根管治療をしてくれる先生は優しい先生なのでしょう。
しかし、いい歯科医師と言えるのでしょうか。
根尖が破壊された再根管治療の成功率は40%と言われていますが
今回はすでに大きく切除されています。
リスクと予後をお伝えしましたが患者さんの強い希望で保存に挑戦することになりました。
ラバーダム防湿を行い
ガッタパーチャを除去します。根尖は当然大きく開いています。
次亜塩素酸ナトリウムで洗浄し
エルビウムヤグレーザーで根尖外組織を焼いて殺菌しています。
外科になってもいいように5mmほどMTAセメントで根充し経過観察に入りました。
その患者さんは3年目で初めてラバーダム防湿をした状態で根管治療を受けたそうです。
日本でのラバーダム使用率は5%と言われています。
ラバーダムとマイクロスコープを使った精密根管治療は通常1、2回で終了します。
今回も120分1回のアポイントで2本の処置を終わらせています。
それ以上はやることがないし感染や破折のリスクを上げるだけだからです。
それでダメなら外科治療か抜歯を選択してもらうことになります。
今回は運良く症状は改善しましたが
今後も注意深く予後を見ていく必要があります。
ここで伝えたいことは、末期の歯を救えたということではなく
このような患者さんを減らしたいということです。
チャレンジングな治療は成功率も低いし
残せた歯の予後も当然悪いからです。
きちんとした根管治療とは
丁寧に無菌的な処置を行う。
ただただこれだけなのです。
メーカーや業者は物を売ってナンボなので
機械や道具が無いとできないような事を言うが
イニシャルトリートメントであればマイクロスコープを使う必要はないし
ニッケルチタンファイルやMTAセメントを使う必要もほとんどないのです。
(左術前:4前歯全て根管充填されるも仮封材を認めない)
(右術後:2前歯のみMTAで根管充填し湿綿球の上に3㎜以上の仮封材を認める)
日本の根管治療では根管充填がレントゲンで綺麗にできているかどうかが重視されがちですがそうではない。
レントゲンでは何をどのように処置されたかは判らない。
どのように考えどのようにしたのか?が大切なのです。