むし歯は何処まで削ればいいのか⑤
むし歯は何処まで削ればいいのか⑤
むし歯はエナメル質が崩壊すると象牙細管内への細菌侵入が起こる。
Ricucciの病理組織像を見ると
過去に教科書で習ったむし歯の進行そして象牙質う蝕の層と明らかに異なっている。
象牙質う蝕の進行は
①軟化して②着色して③細菌が侵入すると習った。
しかしこの切片だけでも細菌侵入が先行している部位があることがわかる。
細菌の存在部位も連続ではない。
転移するかのように離れた部位に細菌が集積していたりする。
歯科医師がこの病理切片を初めて見たときは衝撃を受けるだろう。
象牙細管ごとに細菌の侵入深度は異なっており
これを見ると
象牙細管に侵入した細菌の完全な除去などは
100%不可能であることがわかる。
むし歯は徹底的に取り除くように習ってきたし、
そう思っている歯科医師が殆どでしょう。
ここからは私見ですが
むし歯が停止する写真や文献を見ていると
そもそも人間には自然治癒力が備わっており、
歯の病気に関してもある範疇までは同様ではないのかと思えてきた。
やはり感染していたとしても
停止して進行しないのであれば歯の組織は保護すべきだろう。
自分ならそうされたい。
要は
象牙質の感染が
停止しない部位まで進行しているかどうかで
除去する範囲、除去の仕方を切り替えるべきで
そこに
歯科医師による審査・診断が
重要なファクターとして存在する。
そう思えてならないのだ。
従来のむし歯治療ではとにかく
感染歯質を取り切ることを目標にしてしまっているため、
進行が停止する軟化象牙質を削りすぎてしまっている可能性が高い。
もちろん取りきらなければならない深さまで進行していれば
感染部分を徹底的に取り除かなければならないのであるが。
従来の方法では
保存できた歯髄を根管治療(抜髄)していることも多いだろう。
患者さんのためにもっと低侵襲な治療ができるのではないか。
そんな疑問が湧き上がってくる。