折れたリーマーを取って欲しい ③
さていよいよ麻酔とラバーダム防湿を行い仮封材を外していく。
何が行われているか解らない“パンドラの箱”
丁寧に、慎重に進めていく。
貼薬には毒性の強いパラホルムアルデヒド製剤は使っていない。
水酸化カルシウムを使っているようだ。
既に除去する水酸化カルシウムに血液が滲んでおり
これから先の困難さを予兆させる。
水酸化カルシウムを除去すると多量の軟化象牙質を認めた。
軟化象牙質の中には当然細菌が含まれる為
根管を触る前に歯冠部の感染歯質を除去しなければ細菌を根尖に押し込むことになる。
我々にできることは細菌の徹底的な除去しかないので
このように多量の細菌を取り残した根尖性歯周炎は絶対に治らない。
クラウンダウンのように上部の感染を取り切ってから深部に進んでいく。
歯冠部の感染歯質除去だけで30分必要だった。
レントゲンで問題が少なそうだった遠心根から触りはじめる。
残髄しているのか肉芽なのか解らないが軟組織からの出血を認める。
根管口部を清掃し
作業長を決定し
次亜塩素酸ナトリウムで消毒しながら拡大を進める。
Apical Foramen より1mm短い作業長に決定したにも関わらず
マイクロスコープを強拡大し確認すると根尖は大きく広がっている。
根尖は破壊されておりMTAセメントかアピカルシートを作って根管充填する必要がある。
今回は#60まで拡大してアピカルシートを付与する必要があった。
ここまでで60分。
ここからいよいよ近心根に挑む。
CTでは舌側根管でリーマー破折したように認められるが
頰側根管を大きく触ってパーフォレーションしている。
マイクロスコープで覗いていても削った跡や水滴が顕微鏡の光を反射して光るのでリーマーの様に見えるのだが
知らないと本来の根管から逸脱してしまうので注意が必要だ。
舌側に向かう本来の頰側根管を見つけることができたので
先にパーフォレーションリペアを行う。
パーフォレーションリペアは歯冠側1/3で予後が悪く、
期間も穿孔して直ぐに封鎖した方が予後が良い。
根管内に入り込んだ肉芽を除去しMTAセメントを充填する為の形成を行った。
本来の根管を封鎖してしまわない様にガッタパーチャポイントで保護し
穿孔部は次亜塩素酸ナトリウムで止血を行いBCパテを充填した。
BCパテ硬化に20分かかる為
遠心根に水酸化カルシウムを貼薬し
仮封の厚みは3.5mm以上になる様にして1日目を終了した。
③感染歯質は徹底的に除去し、根尖に感染物を押し込まないようにしましょう