インプラントは骨とくっつけばいいのか
インプラントは骨とくっつけばいいのか
歯科インプラント治療で大切な事柄の一つにメインテナンスがある
基本的に整形外科で用いるインプラントなどの人工物は皮膚に覆われており、施術後の細菌感染のリスクは少ない。
しかし歯科用インプラントは上皮を突き抜けており、細菌だらけの口腔内と本来無菌である骨とを連結してしまっている。
歯も似ているがそのような臓器は他に無い。
生体親和性の高いチタンとはいえ、異物である歯科インプラントを長期に患者さんに使ってもらうには
セルフケアとプロケアが非常に重要になる。
メインテナンスビリティーを高めるためにやるべきことは沢山あるがここではインプラントポジションについて見てみたい。
①は他院でインプラント治療を行い、差し歯部分をやり直し希望の患者さん。
②はあべ歯科クリニックでインプラント治療を希望してくれた患者さんである。
ガムが付いて入ればパッと見、大差が無いように見える。
しかし、ガムを取って見るとインプラントとクラウンの立ち上がりの角度が大きく異なる。
2つのインプラントともに2回法インプラントなので
インプラントのプラットフォームは骨頂もしくはやや骨縁下にあるはずである。
これは模型なので歯肉の厚みと骨の位置はわからないが
①は②に比べて上部構造の立ち上がり角度が急なことがわかる。
インプラントは天然歯との距離、
またはインプラントとインプラントの距離に制限がある。
近すぎると骨が無くなるという問題が起こるのだが、
遠すぎるとこのような上部構造の問題が起こる。
どちらが構造力学的に安定し、セルフケア、プロケアがしやすいだろうか。
両方共にまだテンポラリーであるが急な角度のついた部分に汚れが溜まりそうなので慎重な調整を必要とする。
確かに①のインプラントは骨とくっついているし3年経った今の所インプラント周囲炎になってもいない。
このインプラント治療は成功しているのかも知れない。
上部構造が破折していた上に磨きにくいということで上部構造の再製を希望されたのだが
制限が大きく適切な上部構造は作ることができない。
①が力学的にも清掃性的にも不利な理由はインプラントポジションである。
つまりインプラントをもっと
太くするか
手前の歯に近づけるか
深くするか
しなければ上部構造の形態は変えようがない。
なんとも言い難いが
インプラントポジションが良くてもインプラント周囲炎になる可能性がある。
インプラントポジションが悪くてもインプラント周囲炎にならないかも知れない。
しかしここで伝えたいことは出来るだけ事前に考えて準備をし、
問題が起こりにくいように処置を行うことが重要だということ。
メインテナンスしやすい環境を作るか作らないかは一般の方から見れば僅かな差。
しかしその僅かな差が修正の効かない差になる。
その“修正”を決断するのであれば“インプラントの撤去”が必要になる。
“ 違いを生む違い”を大切にしたい。