仮歯の重要性
『仮歯』
『テンポラリークラウン』
『プロビジョナル・レストレーション』は一体何が違うのか。
それは単に呼び方の違いです。
TemporaryもProvisionalも『一時的な・暫間的な・仮の』という意味
仮歯でもテンポラリークラウンでもプロビジョナル・レストレーションでも
いかに精度を高く作製するか。
用途や目的が多岐にわたるため、用途や目的で呼び方を使い分けている歯科医師もいるかもしれないですね。
私たちも
最終補綴物に何も反映させないモノは『仮歯』や『テンポラリークラウン』と呼び
事前(Pro)に目標(vision)を反映させるモノは
『治療用の差し歯』や『プロビジョナル・レストレーション』と呼び方を使い分けしています。
簡単に試着や試乗のできない人工歯は
最終的な補綴物(さし歯)をどの様に設計、診断すればよいのでしょうか。
患者さんが生物学的、審美的、機能的に満足する補綴物(さし歯)の作製は
型どりをしてたった一発で完成させることができるほど容易なことではありません。
個人的には簡単に取り換えや、やり直しを考えている歯科医師や患者は
それがたとえセラミックスクラウンだったとしてもテンポラリー(暫間的)でしかないと思います。
暫間的な修復物には様々な目的があります。
以下のような多くの点を確認してやっと
最終的な補綴物は患者満足と長期的な機能と維持に近づくと考えています。
① 歯をしみないようにする(痛みからの保護)
② 象牙細管の封鎖(細菌からの保護)
③ 咀嚼機能の回復(噛める状態にする)
④ 歯の移動を防ぐ(傾斜や対合歯の挺出防止)
⑤ 審美的回復(見た目をよくする)
⑥ 軟組織の形態調整(エマージェンスプロファイルの調整)
⑦ プラークコントロールの確認(歯肉の状態をよくする)
⑧ 治療咬合の生態適応の確認
⑨ 歯牙削除量の最終確認
⑩ 最終補綴の形態確認
以上の幾つを達成できる暫間的な修復物を作製して確認してくれていますか。
最低でも2回、60〜90分は時間が必要になるでしょう。
<術前:色調審美障害と歯肉の炎症を認める>
<マージンと歯肉縁下の形態を調整していく>
<フィニッシュラインに即時重合レジンを筆積みし>
<強拡大下でピッタリに合わせる>
<一定期間使ってもらって③〜⑩を確認する>
保険診療ではテンポラリークラウン(Tec)といい
前歯のみ処置を開始した日から何回作っても1歯につき1回限り算定できます。
340円算定って10割でですよ。。。
作製および装着に使用される材料などの費用は算定できないときてます!!!
まじか!!相変わらず凄いです。。。
できないシステム。
だからみんなやらない。
やる訳ないですよ。
あまりにも低い評価はバカにされたような気がして
感情的にならざるをえません。
しかし、そのような実情を患者さんは知らないので歯科医師に対する信頼問題になりかねないのです。
仮歯の調整などしない“最終補綴に移行する審査診断”に価値を感じていない歯科医師が多いのは
『審査診断と再評価をないがしろにされている保険診療』
に慣れてしまった日本国民には馴染みのない、馴染めない医療行為だからなのでしょか。
そして歯科衛生士さんにテンポラリークラウン作製をさせたりする。。。
そもそも『仮歯』、『テンポラリー』っていう呼び方が良くないですよね。
使い捨てのモノでは無いのに
仮設住宅みたいに既成の使い捨てなモノみたいなイメージが拭い去れない。
『プロビジョナル・レストレーション』の材料は主にレジンを用いますが
、機能と形態は最終補綴物と同様のものが与えられた治療用修復物で、
最終補綴物作成の為に必要な医療行為のステップです。
<一週間後歯肉に炎症は認められない>
<仮着セメントのウォッシュもない>
つまりモノではないのです。
それは歯科技工士に依頼した模型上だけでは達成できず、
チェアーサイドで患者を目の前にした歯科医師のみにしか調整できない
人工歯という臓器作成のために行う医療行為なのです。
よく、『もうこれで良いみたいです。これで良いです。』
と言われますが、そうでなければこのステップの意味がありません。
その形で良いかどうかも使ってみなければわかりません。
それで良いかどうかは患者さんが決めるのではないのです。
審美的な要素の最終決定権は患者さんにありますが、
それ以外の生理的・機能的な面は我々歯科医師が判断しなければならないのです。
一時的とはいえ1カ月から数年使うことさえあります。
<術前>
<ワックスアップ>
<上顎前歯プロビジョナル:6ヶ月使用>
<上顎前歯最終補綴:下顎治療途中>
任意中断してしまうと材料のすり減りによって歯の移動や、
むし歯の再発を起こし、最悪短期間で抜歯になってしまうこともあるので
患者さんは歯科医師の指示を守ることが重要になります。
そして最終的な補綴物を歯科技工士さんに
身体親和性の高い材料に置き換えて、丁寧に作成してもらってください。