18歳の根管治療
18歳女性 学生
カリエスリスク高
他院で1回根管治療途中からの転院
マイクロスコープ無し、ラバーダム無しで
30分の予約で回数も何回かかるか分からなくても30~50%の成功率があるという。
世界平均10分の1の治療費ならそれで充分なのか??
根尖の透過像である病変の大きさが5mm以上で38%
根尖の破壊があると根管治療の成功率は40%程度になると言われている
歯周ポケットはノーマルで
CT像ではPAに比べかなり大きく歯の根の周りが黒くなっている
診断は
Pulpal:Previously initiated therapy
Periapical:Symptomatic apical periodontitis
とした
今回も既に他院でラバーダム無しの根管治療を受けており
3根管のうち2根は#10のファイルが全く抵抗なしで穿通した
つまり根尖は少々破壊されている可能性がある。
このように抜髄された歯であっても根尖を触ることは勿論だし
部分的に歯髄が生きていることもある為根管治療は全て麻酔下で行なう
遠心根は扁平で#40のプロテーパーGoldNiTiファイルと超音波チップを用いて拡大清掃し、
近心根はより触られていた舌側は#40と
あまり触られていなかった頬側は#30までの拡大とし
根管充填はバイオセラミックシーラーとガッタパーチャを用いてCWTで行った
文献的に90%以上の成功率がある最初の治療を
キチンとする事にこそ一般GP一番の意義と価値があるのではないか
殆どの歯医者がしない。
彼らが自己肯定する口癖は『保険だから』だ。
これを読む若い歯科医は保険医の前に歯科医師になって欲しいと切に願う
これを読む根管治療で悩んでいる患者さんは
キチンとした根管治療をしている歯科医師か
保険診療にこだわるならば
保険診療でもラバーダムを使っている歯科医院を
なんとか自力で探すしかない
保険診療ではマイクロ加算はあるがラバーダム加算は無い
CTやマイクロスコープは使ってもラバーダム防湿をしないという
全くもってして不可思議な治療といえない治療が横行している。
90分1回のアポイントで
根管治療、根管充填と支台築造までおこなった
親御さんもよく治療に理解を示してくれた
EMRで求めたアピカルフォラメンから1mmアンダーを作業長とした
シーラーが根尖の外まで出てしまったのはまだ病変が治癒傾向にない事と
根尖を初回にいじられすぎた事が原因であろう
根尖に病変を認める場合
根管内のバクテリアを減らすことを目的に水酸化カルシウムを1週間程度貼薬し
2回で根管治療を行う事が多い
しかし今回は2ヶ月前に初めて根管内を1回しか触っていない事とその程度、
そして患者の年齢から免疫力に期待して1回で終了させた
今後は慎重に経過を診ていくことと、
外科治療の可能性を伝え
早期に適合の良い補綴治療が必要であることを伝えた
彼女が今の女性の平均寿命の87歳まで生きるとしてあと70年もある
抜歯して欠損補綴を全力でやったとしてもインプラントやBrがそんなに持つ訳が無いだろう
彼女は『18歳の若さで根管治療が必要となった事』が1番の問題点であり
他にも実質欠損のある虫歯や湿潤下で白濁したエナメル質も認める
今後、生活習慣を含めた口腔内環境の改善が本当の意味で彼女の歯科治療になる