なぜ根管治療に1年半通い続けるのか③
90分の予定でアポイントを取っていただいた。
時間をかけて浸潤麻酔を行い、麻痺するまでに歯面清掃を行う。
追加の麻酔後に今まで一度もしたことのないラバーダム防湿を行った。
表面の消毒後に仮封材を除去する。
セメント下の綿球を外すとおそらく水酸化カルシウムであろう白い粉材が現れた
水酸化カルシウムは長期に貼薬すると歯牙破折の可能性が高まると言われている
一体どのくらいの期間水酸化カルシウムが貼薬されていたのだろう
水酸化カルシウムを洗い流すと
根尖まで観察することができた
幸いマイクロスコープの強拡大下においても
破折線やパーフォレーション、大きな根尖の破壊はないようだった。
たっぷりの次亜塩素酸ナトリウムで消毒しながら
EMR(電気根管長測定器)で作業長を決定し
プロテーパーゴールド(ニッケルチタンファイル)#40まで拡大した
EDTA で削りカスであるスメア層を取り除く
切削粉の詰まった象牙細管をスメア層と呼ぶ
スメア層を取り除くべきかどうかはまだ答えが出ていない
しかし切削粉中に細菌が存在する
象牙細管内への消毒を促進させる狙いで今自分はスメア層の除去を行うようにしている
再度次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
ここで排膿していたり浸出液が止まらない場合は
根尖まで水酸化カルシウムを貼薬し1週間後に根管充填を行う。
今回は根管内の乾燥が達成できたので根管充填を選択した
シーラーは収縮して隙間ができないように
膨張するバイオセラミックシーラーとガッタパーチャポイントで
垂直加圧充填を行った
直後にレジン築造を行う
根管充填のシーラーやガッタパーチャが付着した根管壁を
接着が達成できるように清掃する
平成28年に保険診療にファイバーポストが適用された
猫も杓子もファイバーポストを使う。
合着ですむメタルコアに比べファイバーポストコアは接着しなければ当然予後が悪い
接着は歯面処理と防湿が重要だが根管内をきちんと見て処理しなければ
接着は達成されない。
根管充填後の根管内清掃は難易度が高いことを
マイクロスコープを常に使っている歯科医師しか知らない
想像よりはるかに順調に治療は終了した。
この1年半以上かかった負の連鎖を止めるための治療は
処置と説明で60分だった
根管治療の成功率は補綴(差し歯)の質によっても左右される。
この後、精度の高い補綴治療を行って経過を診ていかなければならない。
なぜこの患者は本来90%以上成功率のある治療で1年半通院しなければならなかったのでしょうか。
痛みでしょうか?
ならば痛みの原因は何ですか??
なぜ痛みが消えないのでしょうか?
答えは
細菌と破壊がほとんど
薬に頼っても治らない
ではどうすればいいんでしょうか?
無菌的で丁寧な処置の積み重ね
それしかない