他院を中断・転院してきた むし歯治療④
歯を削った場合
生活歯髄(健康な歯)においては歯髄反応で滲みたり
テンポラリー(仮封や仮歯)が外れて咀嚼機能障害や
象牙細管内への細菌感染の可能性もある
生活歯髄であれば内圧が高い為細菌侵入に対する抵抗力もあるだろうが
失活歯髄であればそれもない為、
あべ歯科クリニックでは形成後にICD(immediate dentin sealed)を行ったり
ハイドロキシアパタイトを用いることで象牙細管の封鎖を行い
象牙質感染の予防処置を行っている。
2~3週間後にセラミックスの修復物が歯科技工所からデリバリーされる
このタイムラグが間接修復治療の最大の弱点だろう
接着性の修復物の装着はラバーダム防湿が必須と言える
一般的によくやられているロールワッテを用いた簡易防湿の口腔内の湿度は90%
ラバーダムを装着した口腔内の湿度は室内とほぼ同じ45%だったという実験がある
水の中で接着剤でモノを付けるのと
乾燥下で接着剤でくっつけるのを比べて貰えばわかりやすいでしょうか??
乾燥下でなければ接着剤の持つ接着力が発揮できないのは
火を見るよりも明らかでしょう。
歯面清掃後にエナメルエッチングを行い
レジンセメントで接着していく
レジンの皮膜厚さがある為精密に作っている補綴物ほど浮き上がりに注意が必要になる
バリや隣在歯に付着したレジンを慎重に除去するだけでひと仕事
接着後にも噛み合わせを確認して調整する
PA(レントゲン写真)もバイトウィング法という方法で撮影し
段差やレジンセメントの取り残しがないかを確認した。
さて
『むし歯なのでとりあえず削って確認しましょう』『大丈夫でした、次回は型取りです』
などという歯科治療から逃げてきた患者さんへの治療はこれだけでよかったのだろうか。
いや
困ってはいないが、すでに他にも多くの不適合な修復が多くなされてしまっている。
それらの部位に問題が起きにくいようにアドバイスや調整を行うこと、
それら部位に症状が出た時、早期に確実な再治療を行うこと、
そして今回の治療部位が少しでも長く機能するようにサポートすること。
それが前向きにこの患者さんの口の健康を守る唯一の方法だろう
そしてそれを継続し、数年後にやっと転院してよかったと思ってもらえるのかもしれない。