今、日本のお口の健康は危機的状況に陥っています。削った歯や、歯を抜いた後に修復して機能回復させる人工歯を作る専門家が歯科技工士です。
その歯科技工士が日本からいなくなりつつあります。
それは歯科技工士だけでなく我々歯科医師の責任でもありますし、この問題をどうしていくかは国民の責任にもなります。
この問題の原因も保険制度である事は間違いありません。
モノの値段の評価しかなく、技術の評価のないツケは最終的に患者、つまり国民に及ぶのです。
フルオーダーメイドの審美的にも機能的にも満足出来る人工歯は、手作業で大量生産できません。
5年以内の離職率80%という超過酷な職業環境の中でも生き残り、さらに精度の高い信頼できる人工臓器を作成できる歯科技工士は僅かしかいません。
それは知識と技術が共存しなければ出来ない仕事だからです。
手先がどんなに器用でも急にできるようにならない、すぐにスペシャリストにはなれない、匠と呼ばれるようになるには何年もの時間も経験も必要なのです。
知識のない歯科技工士が作成した人工歯は単なるモノでしかないのです。
アナログからデジタルに移行するのは時代背景で必然かもしれません。
CAD/CAMも普及してきましたが最後の調整は人の手が必要なのはまだまだ変わらないでしょう。
その調整によってモノに命が吹き込まれ、臓器となるのです。
歯を残すために歯周病の治療やむし歯の治療、よく噛めるように噛み合わせの治療や入れ歯の型取りやインプラント治療。
笑顔や見た目を改善する審美的な治療も最終的には全て補綴と呼ばれる人工歯が必要になることがほとんどです。その人工歯が劣悪なものであればそれまでの治療は台無しになります。
装飾品などと違い取り外しが効かない上に体内で機能させなければならない。
しかも1日や2日でなく数年間の長期にわたって。
あなたの身体の一部として数年間使い続ける人工臓器をどのように選ぶのか。
歯科医師がどのような人工歯を選択しているのか。今一度よく考えて選択していただきたいと思います。
口腔内の歯牙を可能な限り忠実に再現するためには模型を作成する石膏の管理も重要になります。石膏の種類のなかで硬化膨張率が最小・作業時に削れてしまわないように全ての模型で超硬石膏を用います。
石膏との混水比を守るためデジタル計量するのはもちろん、シリコン印象では水素ガスの発生や完全重合する24時間以上の静置後に石膏注入、アルギン酸寒天印象では硬化後すぐに石膏注入し、石膏硬化後は面荒れ防止のため印象材が乾燥する前に撤去しています。
患者さんの歯に限りなく近い模型を作成し作業を進めていきます。
精密な補綴物によって根管治療の成功率も向上するだけでなく、むし歯の再発と歯周病疾患を予防します。
装飾品と異なり取り外しのできない人口歯は適合がよく、整体安全性の高い材料で、機能的な形態をしていることが重要なのであって、歯のような色をしているという審美的な問題は最終的な問題なのです。
材料の違いも大切ですが、それ以外の要件を達成できる補綴物には知識と技術を備えた歯科技工士が、約40倍もの拡大下で人口歯を丁寧に慎重に作りあげます。