保険診療の10割負担が自由診療なのではありません。
治療計画・治療方法・クオリティー・時間・材料全てが違います。
今はどこの歯科医院に行っても、保険診療と自由診療の説明があり、患者様は常に選択を求められるのではないでしょうか。国民の皆さんは信じられないことかもしれませんが日本の歯科医師のほとんどは『保険でそこまでできない』と思ったことや言ったことがあるはずです。
では、なぜこのような事になってしまったのか。
保険診療と自由診療は何がどう違うのか。
そして「保険医が行う自費診療 」と「自由診療専門医の自由診療」は何が違うのか。
私は、この決定的な違いを以下のように考えています。
『自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。』
ヒポクラテスの誓いの一文の思想に生きる歯科医師なのかどうかです。
「国民皆保健制度」のことは、みなさんご存知だと思います。
この制度は、誰もが等しい医療を受けられる素晴らしい制度のように思われがちです。もちろん、この制度のすべてが間違っているわけではありません。安心感を生むこの制度に私も感謝している者のひとりではあります。
日本のほとんどの病院・医院は、この国民皆保険制度を使って医療を提供する「保険医療機関」です。
この制度が生まれた昭和36年から数えると、50年以上もの長い歴史があり、その中には細かな改定はありましたが、50年前と現代では当然医療も社会環境も大きく変化しています。
歯科医療においては、確実に大きな問題を抱えながら今日に至っています。
健康保険による診療は、「誰でも同じ医療が受けられる」、つまりは国が定めたビジネスモデルに賛同するということ。これは、ごくシンプルなプランを用意された医療機関にとっては、診療のことだけを考えることができるというメリットがありました。
「誰でも同じ医療が平等に受けられる」から、患者さんにとってもどこに行っても同じ料金という安心感があります。
しかし、この制度が生まれてからは50年以上の年数が流れています。
50年の中で医療技術はどんどん発展し、新しい器具を取り入れられ、新たな治療法が確立したりと高度化しています。
それなのに、最新の医療に見合った予算から、保険診療はどんどん離れていってしまいました。
代表的な治療である根管治療という例だけ挙げても、日本の治療費は諸外国の1/6~1/20と、一般業界では考えられない低予算を強いられています。これが、財政難・歯科医師過剰・歯科医師会の政治力不足・患者さんの予防意識がなかなか上がらない、などとよく言われる要因でもあるのです。
日本の歯科医療は確かに「安い」のです。ただしこれが、「もっとも適切な治療であるか」かというと、実は日本は国際的な標準にすら達していないのです。
※A 高機能材料、高い技術などを使う場合は自費診療となる
※B 患者さんの口腔内状況により保険診療か自費診療かを決定する