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マイクロスコープによる治療

マイクロスコープだけでは良い治療はできない

ここまでマイクロスコープの必要性をお話してきましたが、とはいえマイクロスコープはよく見えるだけの道具であることには変わりありません。精密歯科治療においては、術者の知識と技術、経験と道具、時間、患者さんの協力が必要です。

最も大切なのは、誰がどのように使うのか。
鬼に金棒で例えると、大きくて強い鬼が金棒を持てばさらに強くなりますが、小さくて弱い鬼が大きな金棒を持っても役に立ちません。むしろ、逆により弱くなるかもしれません。
歯科医療も一部の予防処置を除いては外科手術と同様に、人間の身体に侵害を加えることになります。これが治療行為として成り立つのは、与える侵害よりも得られる利益のほうが大きいからです。
診断や治療方針の正しさを保証するのは科学的な根拠や、それらが証明された論文や文献などの情報ですが、医療行為そのものを保証するのは治療担当者の技術の質にかかってきます。
精密歯科だけでなく歯科治療は2度とやり直しができないことが多く、知識と技術の両方が必要なため、誰に治療してもらうかがとても重要になります。

マイクロスコープはよく見えるが故に、やることが圧倒的に増えます。見えるので確実な処置ができるのですが慎重な処置には時間が必要です。見えるけれども届かない、触ることができない。通常の器具では大きくて視野を妨げるという事も起こるため専用の器具が必要になってきます。まだまだ普及している治療では無いのでオリジナルで作成したり、専用器具の業者が集まる学会に出向いていって道具を探したりする事も重要です。
マイクロスコープを用いて13.6倍で治療している時の視野径は16ミリ。21.3倍での視野径は10ミリしかありません。たった1センチ動かれると見えなくなる。長時間同じ姿勢で居続けることも非常にスタミナが必要です。全身麻酔を施さない歯科治療においては患者さんの協力も必要不可欠なのです。

それぞれの患者さんにとって何が最良の治療なのかを共に考え、挑んでゆく。
そんな歯科医師である必要があり、また、そうなりたいと考えています。

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