むし歯の再治療を行うと、通常同じ歯を5回再治療すれば歯の傷が大きくなり、その歯は抜かなければならなくなるといわれています(Sheiham,1994)
精密むし歯治療は、FDI(国際歯科連盟)が2002年に提唱したMI(ミニマムインターベンション)の考えに則り、感染歯質を取り残すことなく接着修復を行う、極力再治療を防ぐ予防歯科です。
むし歯の取り残しがないように丁寧に、
健康な歯を削りすぎないように慎重に、
隙間や段差でむし歯が再発しにくいよう慎重に。
それが私たちあべ歯科クリニックの精密むし歯治療です。
治療方法 | 2次 むし歯 |
脱離 | 歯髄炎 | 平均 使用年数 |
---|---|---|---|---|
コンポジットレジン充填 (プラスチックの詰め物) |
5.1年 | 3.3年 | 5.6年 | 5.2年 |
インレー (金属の詰め物) |
5.8年 | 4.1年 | 5.3年 | 5.4年 |
クラウン (金属のかぶせ物) |
8.2年 | 6.2年 | 8.9年 | 7.1年 |
ブリッジ | 10.1年 | 6.2年 | 7.5年 | 8.0年 |
アマルガム充填 | 7.4年 | 8.4年 | 6.0年 | 7.5年 |
森田 学 他:歯科修復物の使用年数に関する疫学調査(岡山大学予防歯科)日本口腔衛生学会雑誌45(5):1995より
むし歯の除去(う蝕除去)は、歯科の中でごく一般的に行われている治療法です。
しかし、「除去すべきう蝕象牙質」には診断基準がなく、多くの場合は経験や手指の感覚による判断において除去されています。
総山孝雄ら(注1)によると歯学部学生で40〜98%、経験年数15年の歯科医師でさえ、う蝕を13%取り残すというレポートがあります。
上図は、全ての歯科医師がテストで覚えたであろう象牙質う蝕の層です。
多菌層・寡菌層・先駆菌層・混濁層・透明層・生活反応層に分かれています。
歯学部では、先駆菌層までを除去するように教わるのですが、どこまで除去するかは知っていても、実際に出来るかどうかは別の話になってきます。
むし歯かどうかの判断は色、硬さ、レーザー蛍光法、う蝕検知液などの方法で行います。
総山らは、軟化したう蝕象牙質が以下の2層で構成されていることを報告しています。
・細菌感染があり再石灰化不可能で知覚がない「う蝕象牙質外層」
・細菌感染がなく再石灰化可能で知覚のある「う蝕象牙質内層」
う蝕除去に際し、このうち再石灰化可能なう蝕象牙質内層は保存すべきであるとも指摘しています。
しかし、う蝕象牙質内層・外層はどちらも着色が薄く軟らかいので、色や硬さなどを基準として2層を確実に識別することは不可能なのです。
全く性質の異なる「う蝕象牙質外層」「う蝕象牙質内層」。
この2つの層を的確に識別するため、1%アシッドレッドのプロピレングリコール溶液を用いた「う蝕検知液」が開発されました 。
当初、染色されたう蝕象牙質はすべて除去するよう指示されていました。
しかしう蝕象牙質を削りすぎてしまうといった指摘も多く 、最近では淡いピンクに染まったう蝕象牙質は削らず残すことが推奨されています。
それでも “ 淡いピンク ” という視覚での判断となると、その基準はやはり曖昧であると言えます。
そこで、この基準をより客観的に行うためのう蝕検知液も開発されています。
より大きい分子量のポリプロピレングリコールを基材に用いることで検知液の組織浸透性を小さくさせ、う蝕象牙質外層(第一層・感染層)のみを染色するというものです。
私たちあべ歯科クリニックでは染色浸透性において、この染まりすぎないう蝕検知液を使用し、徹底的な感染歯質の除去を行なっています。
染色部分を取りきることで感染層を取り無菌層を残す、つまり「削りすぎない治療」ができるのです。
日本歯科保存学会が発行する「う蝕治療ガイドライン」(注2)でも、
う蝕検知液の染色性以上に客観性をもって、除去すべきう蝕象牙質を判定できる方法はない。
と示されています。
検知液とは、歯科治療時に使われるむし歯に侵されて脱灰した部分を染める薬液のことです。
むし歯の治療をする際は、むし歯を完全に除去することが二次カリエスなど予防に重要です。その際、どこまで細菌に感染されているかは目に見えないため、術者の手指の感覚で判断するしかありませんでした。その為健康な歯まで削ってしまうリスクがあります。
あべ歯科クリニックでは、検知液を使用しております。
使用しているのはニシカのカリエスチェックです。
液がう蝕象牙質の感染層(う蝕象牙質第1層)に浸透し、色素がコラーゲン繊維を染色します。
無菌層(う蝕象牙質第2層)は色が変わらないため、赤く染まった削除すべきう蝕象牙質を目視で確認できるようになります。