院内感染防止への取り組み(ハンドピース)
ハンドピースについて
2017年7月2日 読売新聞に下記のような記事が掲載されました。
全国の歯科医療機関の半数近くが、歯を削る医療機器を患者ごとに交換せずに使い回している可能性があることが、2017年の厚生労働省研究班(代表=江草宏・東北大学歯学部教授)の調査でわかった。
使い回しが7割弱だった5年前の調査に比べて改善したものの、院内感染のリスクが根強く残る現状が浮き彫りになった。
調査は、ドリルを取り付ける「ハンドピース」と呼ばれる柄の部分の管理について尋ねたもの。治療時に口に入れるため唾液や血液が付着しやすく、使い回せば細菌やウイルスを次の患者に感染させるリスクがある。日本歯科医学会の指針は、患者ごとに機器を交換し、高温の蒸気発生装置で滅菌するよう定めている。
調査は日本歯科医師会の会員1000人に郵送で行い、17年2月までに700人から回答を得た。機器について「(全ての)患者ごとに交換」と答えたのは52%。5年前の12年調査(31%)から21ポイント増えた。
一方、指針に沿わずに「感染症患者とわかった場合」「血液が付いた場合など」に交換するとしたのは、それぞれ17%、16%。13%は滅菌せずに「消毒薬で拭く」と回答した。
なぜ、十分な対策を取ることができないのか?
莫大なコスト
院内感染対策のためには、滅菌機器や予備分の器具購入など莫大な投資が必要となってきます。
1本のハンドピースの価格は10万円〜20万円。
滅菌にかけるたびに劣化していきますので、修理費用や新規購入などのコストがかかります。
医療制度の限界
また日本の保険医療制度も、歯科医院の経営難を助長しています。
歯科における保険診療費は非常に安く設定されているため、患者にとっては良い反面、保険診療を行う医院にとっては非常に苦しい経営を強いられることになります。
さらに、院内感染対策に対しての国の補助はほんのわずかであるため、新たに莫大な費用をかけて対策をしようという医院は少数になってしまうのです。
器具の滅菌が追いつかない
一人あたりの単価が安い場合、利益をあげるには一日に何人もの患者を診察しなければなりません。
すると使用する器具も増え、滅菌に時間もコストもかけることができなくなり、洗浄しただけの使い回しがされるというような事態になってしまうのです。
わたしたちにとって保険診療は安いという恩恵がある一方で、コストをかけられないがためのリスクも確実に存在します。
感染経路の特定が難しい
仮に何らかの感染があった場合、歯科診療が原因であったかどうかの特定は難しいとされています。そのため問題が顕在化されず、業界全体として対策意識が広がりにくいというのも理由の一つとして挙げられます。
当院のハンドピース管理
一人の患者さんに1回の治療につき2本から3本使用します。
使用後、洗浄・滅菌し終わるまで約30分ほどかかります。
当院のユニットは5台。
5人の患者さんに15本必要になるとして、次の患者さんの分も事前に準備しておきますので、最低でも30本のハンドピースが必要になる計算ですが、ギリギリの状態では、イレギュラーな事態に対応できなくなります。
あべ歯科クリニックには、60本のハンドピースを準備しております。
1つ1つ丁寧にパッキングし滅菌・保管しております。
常に滅菌されたハンドピースを提供する為に、最低必要数の倍である60本ものハンドピースを当院では準備しております。
しかしながらハンドピースの修理には1回平均4万円ほどかかります。
そして、滅菌にかけるとそれだけ劣化もしていきますので、2年に1度は新品に変えなくてはならなくなります。
それだけの膨大なコストがかかりますが、患者さんの安全安心を守る為には、絶対に手を抜いていけないことと考えています。
ただ滅菌器に入れるだけではダメ!
確かに、治療時に口に入れるため唾液や血液が付着しやすく、使い回せば感染してしまいます。
ですから、オートクレーブで滅菌するのですがその前にとても重要な工程を踏まなければ意味がありません。
こちらをご覧ください
タービンハンドピースは、回転を止めると一時的に内部に陰圧が生じ、口腔内の唾液や血液を吸い込んでしまいます。これをサックバック現象と言います。
サックバックとは
実験